「マーケ戦略ボタンポチ」の世界は来る(※1)

AIアプリを開発しながら思ったこと
ムロヤ 2026.09.10
誰でも

おはようございます、ムロヤです。

AIエージェントを何回か使ってみて、いつの間にか埃を被ったみたいな心当たりはないでしょうか。

高性能なモデルを使えばいい感じには作ってくれますが、実務としてトゥーマッチで読むにも認知負荷が高いなんてこともあるあるですよね。こうなれば運用にはのりません。

今回は私がClaude Codeでマーケ戦略系のアプリを作りながら感じた「マーケティングの上流工程におけるAI化の進め方」について書いていこうと思います。

チラ見せ

チラ見せ

1、カスタマージャーニー、インサイト、ターゲット選定、選ばれる価値設計などについてのドメイン知識を持っていないと、アウトプットの判断基準を持てない

一点目はこちら。AIで各種ドキュメントやマーケティング業務に欠かせない整理を行いやすくなりましたが、人間が

  • 実はそれっぽいアウトプットなのか

  • このまま次の工程に進めていい整理のレベルなのか

の知見を持っていないと判断できません。

ドメイン知識がないと扱えません。古典的なマーケティングの学習が大事だとXでちらほら見かけるようになりましたが、こういうことになるからです。

ーーー

ドメイン知識がある→評価するスキルがある→AIアウトプットの良し悪しがわかる→最適なものを見抜き、選べる、ダメ出しできる

ーーー

という流れです。コトラーやバイロンシャープ的な知見のインプットは欠かせませんね。

例えるならば、

  • 自分はオリンピックの審査員が務まるか?

  • 自分はM-1の審査員が務まるか?

というように、プロとしての目です。AI時代もブリーフィングと審美眼は欠かせません

AIによって間違った問題をものすごい速度で解けるようになりました。

微妙なコンテンツやサムネイルや、微妙な戦略も爆速で作れるようになっています。そうならないためにも、判断基準をアップデートすることが欠かせません。

ドメイン知識があってAIによって自身の能力をエンハンスできるのです。

2、(派生して)ドメイン知識なしでは、実務で使い続けられるAIエージェントまで仕上げるのが難しい

例えばカスタマージャーニーマップを作ってそれに基づいてメディア戦略やコンテンツ企画をするAIエージェントをそれっぽく作れたとしても、

  • カスタマージャーニーマップの各項目の定義はそれで自社の実務に使えるのか

  • 狙うCEPsは本当にそれからが効果的なのか?

  • 選ばれる価値設計においてそれでいいのか?Points of Xの観点で弱くない?

  • そのメディア戦略で本当に良さそうなのか?予算や現実性としてどうなのか?本当に今の局面でプラスでインスタを頑張る?など

  • コンテンツ企画はそれがお客様から注目を集めてもらえそうなのか?ブランド構築に有効なのか、今のコアターゲットのCVに貢献できそうなのか

  • うちの会社の面々で属人YouTubeチャンネル施策ってどうなの?

という判断を迫られます。

高性能なAIモデルを使えばいい感じに作ってくれますが、実務としてトゥーマッチで読むにも認知負荷が高いアウトプットになった経験はありませんか?

それは運用にはきっとのらずに何回か使ってみていつの間にか埃を被ったAIエージェントになりかねません。

ここでも結局ドメイン知識や、経験が問われます。

作れることと、使い物になることは全然違いますから。

3、どこに向かいたいのか、何を目指しているのかがないと、「何をすべきか」も見えてこない

何をすべきかが決まった後の「どうやるか」はAIが大得意な領域です。目的関数が明快な最適化問題となり、AIが解きやすいからです。

一方で、売り上げアップのための顧客数を伸ばしたいとしても、どの顧客層を次に開拓していきたいのかや、局面として「売上」を伸ばすのか、「Web登録数の最大化」なのか、それとも株主のプレッシャー的に「今年度の営業利益」を最大化すべきなのか、それともとにかく「キャッシュフロー創出」なのかによっても最適解は変わります。

その選択すらもAIに任せればいいと思えますが、経営方針ですからボタンポチで即決定の世界ではありません。目的関数を作り出すことができないと、AIもメンバーも持ち味も活かせません。この船はどこに向かうのか?どこに向かうとハッピーになれるのか? です。

4、ただし、LLMにもないレベルで会社・事業の固有の現状整理ができていたり(予算、現在のチャネル活用状況、今困ってること、今当たってる施策外してる施策など)、今後どういう感じになっていきたいかが言語化されて文章等に落とされていれば、それなりにAIが補助線になってくれる。まあまあいい感じのドラフトがボタンポチは現実的になる。

いわゆるコンテキストです。これがタイトルの「※」マークの内容です。

直近ではGPT-6 Astraなど、LLMの性能飛躍が凄まじいです。

ですがコンテキストがないと、その性能をフルに発揮してもらえません。ドンズバでまさにそれな回答を得られにくいです。

例えるならば、マッキンゼーのスーパーコンサルタントを雇ったとしても、会社固有の情報を共有してあげられないと、それっぽいフレームワークで一般論やせいぜい商品カテゴリ特有の方針や、決算説明資料や商品ページなどのオープンデータからの類推に留まる、みたいな感じです。

自社のコンテキストをコツコツとドキュメントにしておきましょう。AI-Ready、企業がAIを上手に使いこなせる体制を整えた状態にしておくことです。次々に出てくるAI驚き屋に翻弄されがちですが、まずはこのコンテキストとなるようなテキストを蓄えておくことにフォーカスしましょう。

なお、コンテキストを溜めていくにも、どういう切り口でどういう軸でどういう情報を溜めていいかわからない場合は、それは1のドメイン知識不足とも言えるかもしれません。

(こういう観点もあるので、四半期に一度の部内の戦略会議という会議体を仕組みとして持っていると強いのです。四半期に一度、スライドやwordの形で戦略情報が言語化されますから。もしこういう会議体をやっていなかったら、メンバーのためにも、AIにためにもぜひやっていきましょう。いい経営習慣だったものが、そのままAI資産になります。ドヤ会もおすすめです。ナレッジマネジメントを軽視せず、本気で取り組みましょう。AI時代のナレッジマネジメントのROIは高まってますから)

どんどんAIがやってくれる領域が広がっていき、人間しかできない仕事は究極的には無くなっていくかもしれません。「マーケターとしてはここが残る仕事だ!」と信じたくなりますが、それは組織の生存本能がそうさせているのでしょう。

AIレディにしておき、実行者が常日頃AIとの議論したマーケ戦略のメモリでしたり、逐一現在の状況や目指す方向について何かメモが残されているようであれば、「マーケ戦略ボタンポチ」の世界は来るでしょう。

マーケ戦略の上流をAIに任せられるかは、判断できるドメイン知識・目指す方向・自社コンテキストが揃っているかで決まりますから。

いずれAIの暴走によって世界が滅亡するかもしれないと言われる昨今ですが、消費者マーケティングの世界におけるAI活用について、現状思っていることを書いてみました。

今後はますます内製化や多能工化も捗りますね。その件についてもどこかで書いてみたいと思います。

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