一人一行で俯瞰して戦略策定に役立つ「超名簿思考」
Amazonやネットフリックス等のユーザーの好みに合わせてコンテンツをおすすめ技術「レコメンデーション」について書かれた名著『レコメンデーション・エンジン』。
この本で脳に電流が走って思わず付箋を貼った箇所があります。
「厳然たる事実ですが、レコメンデーション・エンジンのなかでは、あなた(ユーザー)はとてつもなく大きい表の上のとてつもなく長い数字が入力されている行になります。」
こんなイメージになるでしょうか。
↓

これはマーケティングを表すなぁととても思ったのです。
マーケティングはその名の通り、Market × ing。
マーケット(市場)に関する諸活動です。
見込み客を含む顧客のデータベースを頭に思い浮かべて、それの各1行が個客のデータとなるイメージです。私はこれを【超名簿思考】と名付けて、市場開拓戦略を立てる際や施策立案の時に思い浮かべることがあります。
(最初は「マーケットエクセルメソッド」とカッコつけた名前をつけてましたが、よくわからんなと思ったのでシンプルに名簿のアナロジーを使うことにしましたw)
こう思い浮かべば、
・今はどの層の顧客開拓ができていて
・今はどの層からは認知や関心を持たれていなさそうか
を想像しやすくなります。技術者っぽい考え方ですが。マーケットシェアをどうとるかの思考が一気に進みやすくなるアナロジーだと思っています。
セグメンテーションの理解
資源には限りがある。ある商品を全員が全員欲しいと思ったり買えるわけでもない。そんな時にマーケティング投資の対象か否かの線引きとなるセグメンテーションの出番ですよね。
このセグメンテーションについて、マーケットエクセルメソッドの列の属性でどう束ねると効率的かなどと想像しやすいです。「よく見るメディア」だったら「このアパレルなら黎明期のインスタユーザーに当てに行こうとか。感度高そうだし」とか。
なるべく大きな共通項でくくれる塊を見つけていきましょう。そのほうがマーケティングの効率が高まり、かける費用に対しての認知やCVの獲得数も多くなりますので。(ここの思考技術はほんと大事!)
さらに、マーケティング投資を集中させるコアターゲット、マーケティング投資範囲に入る戦略ターゲット、マーケティング投資対象外のオフターゲットも、それぞれがエクセルの行の上から優先度をつけたイメージでも説明しやすくなります。
攻略しようとする市場の整理もしやすいです
「コアターゲット、戦略ターゲット、オフターゲット」と似たような意味ですが、TAM(Total Addressable Market=実現可能な最大の市場規模)などもこの概念ですべてを整理できます。
※SAM(Serviceable Available Market=実際に顧客としてアプローチできるターゲット層)
※SOM(Serviceable Obtainable Market=自社が実際に獲得できる顧客層や市場)

https://bespoke-pro.jp/2021/08/02/tam-sam-som/
ま、TAMをよく使うと思いますので、TAMがマックスまで達した際の名簿の行数をイメージして、今の市場浸透率をマクロに捉えると良いと思います。
売上=顧客数×客単価
の因数分解だけでは「市場における自社のシェア」が見えてこないので。
売上=TAM×市場浸透率(シェア)
だと、まだ新規顧客獲得施策での伸び代がどれだけあるのか掴みやすくなりますよね。
そんな感じです。
市場拡大期か、市場縮小期か
他にも
・人口増の社会においては、エクセルの行が増え続けるイメージ
・人口減少の社会においては、エクセルの行が減り続けるイメージ
など、マクロな観点でも整理しやすいです。
参入している市場が伸びていれば売り上げも伸びつけやすいかもしれません。エクセルの行が増え続けてるなら、獲得しやすそうですよね。
一方で、市場が減り続けてるような事業であれば、売り上げアップのためには競合からシェアを奪ったり、クロスセルしまくったり、新しい事業に参入するくらいしかありません。なんせエクセルの行が減っていっているのですから。
消費者理解を深めるとは、売れるためのデータ把握のこと
列には個客のデータが詰まっているイメージです。

各列の項目のイメージです。
・年収
・居住地
・職業
・最近そのブランドで買ったもの
・性格特性
・よくみるメディア
・よく行く街
・フォローしてるSNSアカウント
・将来の夢
・どういう帰属意識か
・今は仕事でどういう悩みを持っているか
・もっていそうな消費オケージョン
などなどあるでしょう。
消費者理解が深まれば深まるほど、この列の数をたくさん思い浮かべられますし、各列の情報量も濃密なはずです。
自分の親や子供、夫や旦那や彼氏彼女を思い浮かべてみてください。たくさんの列の項目の内容が思い浮かべられますよね。それだけ相手に対する理解が深いということです。
マーケティング用語でいう「ペルソナ」をはっきりクッキリ思い浮かべらることとは、このエクセルの1行の各項目を超具体的にイメージできることと同じです。
消費者理解が浅いならば、きっとこの列の数は出しづらいですし、各列の項目にはどんな内容が入っているかもイメージできないでしょう。
なお、InstagramやTikTokやYouTuber等のプラットフォーマーは、この自分の行動データ(クリック、閲覧、スクロール、検索など)を大量に保有していて、最適なレコメンデーションや広告ターゲティングに活かしています。これがレコメンデーションの技術です。
「あ、この人ブレイキングダウンの動画を最近よくみてるだろうから、公式チャンネル以外にも出演者の格闘家の動画もおすすめに出しておこう」など。
「厳然たる事実ですが、レコメンデーション・エンジンのなかでは、あなた(ユーザー)はとてつもなく大きい表の上のとてつもなく長い数字が入力されている行になります。」
でしたよね。
B2Bマーケティングではマーケティング戦略策定に活かす
B2Bマーケティングでも使える考え方です。市場開拓戦略を立てるときに使えます。
・市場全体はどこまでありそうか(TAM)
・そのうち、リードはどの行まであるか
・何行くらいの人たちは課題に気づけているか
など、マクロの視点を保ちつつ、個客単位やセグメントを意識しながら市場開拓戦略を立てやすくなります。ふわっとした理解ではなく、より解像度を高めて市場を捉えることができるのですよね。

なお、横軸に購買行動を引けば、どのセグメント・どのフェーズの人にはどんなアプローチが最適かも全体を見ながら整理できます。
この【超名簿思考】、参考になれば嬉しいです。
小手先のSEOとかSNSの打ち手でどん詰まりになった時こそ、物事を俯瞰しましょう。
見ている先、立脚点をもっと上に上げるのです。もっとメタに、もっとマクロに。
「超ファネル思考」で現在の打ち手のマッピングであったり、結果指標の達成度が順調かどうかなども考えやすくなります。こちらもよかったらどうぞ。
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