マーケティングのファネルに意味ってあるのかな?
Xで話題沸騰の「マーケティングファネルが機能しにくくなってきている」というX記事。
いい思考整理の機会だと思いましたので、ムロヤが思ったことをつらつら書いてみます。
ファネルという仕事道具の使い方、カスタマージャーニーとの違い、マーケティングの世界で繰り広げられる言説と対処法などについて。ガッツリの長文です。
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1)マーケティングファネル(パーチェスファネルとも言う)はただ単に商品を認知して購入に至るまでの購入プロセスを逆三角形の漏斗(じょうご)に見立てて単純化しただけ。下に行くにつれて進んでくれる人が少なくなる的な。
2)こうしたファネルでの購入プロセスの捉え方は、古典的なAIDAモデルとかDM通販・カタログ通販みたいなダイレクトレスポンス系ではフィットしやすい。こういう場合はダイレクトメールを郵便受けから取った瞬間に、注意→興味→欲求→行動と、衝動買いにつながるパターンもあるので、直線で考えてもまあいけるケースもある。
3)で、AIDMAやらAISASやらいろんな人がいろんなファネルを提唱してるけど、人によってモノの買い方は変わるし、商品カテゴリによっても典型的な購買行動は変わる。触れてるメディアによっても変わる。
また、ファネルの上から下まで一直線で進むような購買行動なんてことはそうそうない。自分のショッピングを思い返すと、そうじゃないですか?行ったり来たり、止まったり、あるとき急に進んだり、色々あります。どうでもいいものはサッと買ったり、オタク的な趣味は検討フェーズそのものをじっくりじっくり楽しむこともあるでしょう。
こちらは過去に私が有線イヤホン「Final A4000」を買うに至るまでのステップです(横軸をジャーニーのステップに見立てたくて、縦が実際の時間軸というちょっと変な図になってますが)。
あるとき急にニーズ湧き出てちょっと興味持って情報収集したと思ったら、パタリとやめる。そして一瞬復活しやめる、そして再び復活し今度は一気にお店に行って購入を決意、高音質を味わいハッピーに。みたいな。

自分のショッピング体験は学習の宝庫ですね。買い物体験こそ教材。買い物が研修そのもの。
4)この世を完全に説明できるファネルなんてものはないと考えるのが健全。高専卒からマーケの世界に入って、みんないろんなこと提唱してるなって思いまくってた。ソートリーダーシップの争い。
「その商品カテゴリなのにどうしてそのモデルを採用してそう考えるの?」とか、「これから開拓していきたい顧客層って、きっとイノベーターとかオタク層とかカテゴリヘビーユーザー層とは違う購買行動とか心理だと思うけどどうしてそのモデルを採用してそう考えるの?」と疑問に思う瞬間も多かった。ハンマー投げは物理の力学(特に回転運動と放物運動など)で説明するのが適切であり、電磁気学のフレミングの法則で説明しようとするのはズレてる、みたいな。「なんでそのモデルを採用してるの?」と。
5)あと、ファネルとカスタマージャーニーは別物。マーケティングの世界ではどちらも世界的にこれだという絶対的に決められた定義はないですが(ブランディングとは、マーケティングとは、とかも同じですね)、マーケティング業務における仕事道具としての使い方は別物。
ファネルは企業を主語としたマーケティング活動を捉えるプロセス分解であり、カスタマージャーニーは「カスタマー」と名前にあるように顧客を主語としたプロセスであり「ジャーニー」です。旅の目的や終着点があるのです。
どちらも施策マッピングとか打ち手の整理には使いやすいのですが、どういう視点から見てる分解なのかが違うのです。ファネルだと認知から購買までのざっくりした検討フェーズで捉えることがしやすい。
カスタマージャーニーだとこれを作る際のフェーズの粒度感にもよりますが、ジャーニー全体のあるフェーズからあるフェーズに移行していくにはどのような心理変化が起きていてどういう顧客体験が良さそうかや、どのようなメディアだと接点が構築しやすいかなどもうちょい細かい粒度で顧客の行動を整理しやすくなる感じ。ファネルとカスタマージャーニーでは視点が違うのです。
カスタマージャーニーは購買以外にもアプリのUX改善とか、プロダクト系でも使われる言葉でもありますしね。感情曲線の可視化もありますし。
6)ということで、ファネルをカスタマージャーニー的に使うと粗い。粗すぎる。例えるならば出刃包丁で細かい飾り切りをしようとしているようなものだ。地球儀を頼りに北海道観光するようなものだ。
7)だから、ファネルをカスタマージャーニー的に使ってもAIDAみたいなダイレクトレスポンス系とか、テキトーに買えりゃあいいんだよ的なショッピング態度の人(なんでもいいからそのカテゴリのものだったらカゴにズドン!みたいな)ではない限り、機能しないことが多いでしょう。そういう単純化されたモデルだから。顧客起点の考え方ではなく、どのような打ち手を整備できているかの全体像は整理しやすい。
8)結局、お客様の購買行動を完全にコントロールなんてすることなんかできない。できっこない。私たちができるのは、買っていただける確率を高めることだけ。
この世の原理として、知らないものは買えない、だから知ってもらわないと買われない。認知率を高めることが大事だ。興味ないものは買わない。興味を持ってもらうことが大事だ。使い道がわからないと欲しいと思わない。だから使い道を教えてあげたり気づいてもらいやすくすることが大事だ。欲しいと思わなければ買わない(親本人としては買いたいくないが子供に駄々をこねられて根負けして買うケースはある)。欲しくてもなんだかなという気持ちがあると躊躇して買わないこともある。欲しくてもお金を持ち合わせていなければ買えない。欲しくても在庫がなければ買えない。
いろんな原理原則がある。それを踏まえて、確率を高められるように手助けをするのみ。顧客接点を増やしたり、メッセージを磨いたり、バイロン・シャープ氏でいうメンタルアベイラビリティを高めたりフィジカルアベイラビリティを高めるなどだ。テンションを上げるだけでもハードルが残ってるならハードルを下げる必要がある。
「意思決定は順番でなく総量で決まる」とあるが、「人間はいったいどういうふうにしてモノを買うのを決めるのか」という原理レベルに考えるほうがいい。
9)カスタマージャーニーは、カスタマーのAtoZの旅のステップを歩む手助けをする的なマインドを持つ考え方が個人的には好きです。カスタマージャーニーもファネル同様に、左から右へ一直線に進むなんてことはなく、ずっと止まったり戻ったりすることも全然ありますが、AからBへの局面や、EからFへの局面など、その瞬間のフェーズに合わせて背中を押してあげたり自社ブランドを選んでもらいやすくするメッセージや体験を与えるように設計していく際にとても役立つ。チームの共通言語としても使いやすい。マーケ部門長を務めていた頃もめちゃめちゃ重宝した。戦略浸透にカスタマージャーニーという共通言語は素晴らしい!
たぶんカスタマージャーニーを一回作ってみたが運用に乗らない人は、きっとファネルのようにカスタマージャーニーを使ってしまってると思います。だから機能しない。
10)ファネルは一直線なんかに進まない、上から下に綺麗に段階通りにステップを歩ませるなんてコントロールできない。止まったり戻ったりもする。でも確率を高められるような取り組みはできる。その時々で効果的な局面・施策を積み重ねていく。そんな思考の立脚点と考え方です。
11)SNSをはじめとするデジタル化によって、顧客接点が細分化しまくってたり複雑化してますます非線形化しているのはまさに。デジタルメディアのアルゴリズムの影響もまた、全容の捉えきれなさに拍車をかける。SEOとか特定の広告媒体などのメディアの一本足打法では、早々に頭打ちがくる。
12)効果的になる露出もあれば、効果的にならない露出もあるのはそうですね。おしゃれな映像を流して最後に駆け込むように企業名を一言だけそっというTVCMとか、飽きられて疲弊している広告クリエイティブを流し続けるとか、ろくにA/Bテストもしないで運用型広告を少ないバナーパターンでやろうとするとか。ただのリーチとか、弱いクリエイティブでフリークエンシーを重ねたところで、砂粒を積み重ねるような効果の足し算にしかなりません。媒体費を溶かすのみ。ラストワンマイルの顧客接点の審美眼はずっと重要。リーダーは木も見て森も見るべし。広告効率が悪いと嘆くならば、現場をまずはちゃんと見ましょう。
13)おまけ。超ファネル思考というメソッドを作っていまして、Webマーケターには馴染みの薄いブランドマーケ系の数字もあわせて理解しよう!というものです。こういう整理を目的とした場合にファネルは便利ですね。ざっくり整理で。
14)おまけ2。というか宣伝。カスタマージャーニーという仕事道具をモノにしていくにも、思考のとっかかりがなければ自分の購買行動を題材にすれば良い。メタジャーニー分析というメソッドも作っています。
という感じです。
ファネル活用とは、企業を主語としたマーケティング活動を捉えるプロセス分解(認知させる、興味を持たせる、欲望させる、行動させる)の上での打ち手のマッピング理解としての活用。
カスタマージャーニー活用とは、その名の通り顧客の旅、購買行動をつぶさに理解し、ジャーニーを歩む手助けをするための施策立案や打ち手の整備としての活用。
という整理を私はしています。
なお、このマーケティングという世界は定義論争が激しいものです。上記はあくまでも私の理解上の整理です。
これらの考え方は共感でした!



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"人は段階を進んで購入するのではなく、理解の総量があるラインを超えたときに購入する。"

この世はTikTokで「興味からズドン」や、Googleのバタフライ・サーキットモデルなど、いろんな会社や人がいろんなモデルを提唱しているソートリーダーシップ合戦だ。
ただそれはこの世のあらゆる消費行動を説明できる森羅万象な普遍理論ではない。
彼らも絶対的な普遍理論として打ち出しているわけでもなく、勝手に普遍理論として受け取ってしまってる人が存在するだけなのが実態なんだろう。魔法の杖や銀の弾丸を求めたり、誰かに提案して説得させるための権威の証としての小難しいそうな理論活用などの思惑かもしれない。
マーケティングにマーケティングされることなく、自分たちが向き合っている顧客、その顧客の購買行動・生活様式、商品特有の買われ方を見つめるのがいいですね。理論で妄想で思考を重ねるのも楽しいですが、現実に実在する人間をよくよく観察して、何が適用できそうなのかを探るのです。人間理解です。
というか、誰を喜ばせたくてものづくりしたり、サービス提供してるんですかと。誰を感動させるためにコンテンツを作ってるんだと。その人たちとの接点の持ち方、欲しがってくれそうな出会い方や伝え方、買いやすいようなラインナップとか価格はどうしたらいいかと現実世界に立脚してうんうん悩むのが健全ですね。
喜んでもらいたくて、そうして儲けるためにも、売ったり知ってもらったり手に取ってもらいやすくする取り組みを担ってるわけじゃないですか。
迷ったら原理思考や、自分のショッピング行動から「そんなことないよな」と言説を鵜呑みにせずメタ認知して捉える態度で、正しい姿勢を取り戻しましょう。
そういうのが大事だなと改めて思ったのでした。いやぁ気づきの多い記事だった。いろんな人がいろんなことを語りなくコンテンツでした。
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