AI時代の顧客対応、どこまで自動化し何に集中すべきか?日本カスタマーサクセス協会代表に聞いた

20年変わらない「人手不足と育成」の壁を、どう崩すか——AI時代の顧客対応について対談しました。
ムロヤ 2026.09.29
誰でも

「新しいプロモーションを仕掛けたいのに、問い合わせが殺到したら現場が持たない」「問い合わせの対応漏れやクレームが発生していて、まずは目の前の問題をなんとかするのが先決だ」そんな理由で施策を見送ったことはないでしょうか。

AI時代の顧客対応は、どこまで自動化し、人は何に集中すべきか。日本カスタマーサクセス協会代表理事の山田ひさのり氏を迎え、マーケティングコンサルタントの室谷良平と対談しました。

――本記事は株式会社ラクスの提供でお届けします。同社の「楽楽自動応対」(旧名称:メールディーラー)は、support@~やinfo@~などの共有アドレスに届いたメールの対応状況をリアルタイムで可視化し、対応漏れや二重返信、属人化を防ぐクラウドシステムです。

2025年10月に従来の「メールディーラー」から名称を変更。メール共有・管理という枠組みを超え、蓄積された対応履歴とAIを活用して顧客対応業務全体の課題解決を支援する製品へと進化しました。製品の詳細はこちら、資料請求はこちら。

「楽楽自動応対」

「楽楽自動応対」

登壇者プロフィール

山田ひさのり:カスタマーサクセスのコンサルティング支援を行うかたわら、カスタマーサクセスの認知を広げ、正しい考え方とプラクティスを整理して発信するため、2024年11月に一般社団法人日本カスタマーサクセス協会を設立。代表理事を務める。

室谷良平:デジタルマーケティングの専門家。株式会社スノードームにて上場企業からスタートアップまで、SEO、SNSなどのデジタルマーケティングを支援。近年はAI活用の推進支援も手がけ、theLetterなどで実務知を発信。

本記事で理解できること

  • 顧客対応チームの刷新、まず考えるべきことは?

  • 事業者が今後おさえるべき問い合わせチャネルとは

  • AI製品でコスト削減できるポイント、現体制をなるべく変えない選択肢について

顧客対応が整っていないと、アクセルが踏めない

室谷 現場のベタな課題として、人手不足で受動的なお問い合わせ対応すらこなしきれない、担当が複数人になると引き継ぎや急な欠勤時に「実はこの相談案件を抱えていて」という把握に困る、といったことはどこでも起きてますよね。

以前、あるメーカーがプロモーションを仕掛けたいという相談の中で、プロモーションのタイミングが新商品の発売時期と重なっていて、「問い合わせが販売店に殺到したらどうするんだ」となり、その時期はやらないでおこうという判断になったことがありました。

つまり、顧客対応の体制を整えておかないと、思い切りアクセルを踏めない。顧客対応がボトルネックになってパンクすると、本来は集客や販売に専念すべき人まで対応に割かれてしまう。守りとしての顧客対応が実は、攻めの機会損失の原因となる。それが最近気づいた点です。

そのうえで山田さんにあえて伺いたいのですが、10年前も今も、きっと5年後もあるだろうという現場のベタな課題は何でしょうか。

山田 問い合わせ対応の課題は、驚くほど変わっていません。「コールセンター白書」が毎年出ていますが、常に課題のトップは「人手不足」。20年くらいずっと同じなのではないかと思うほどです。そしてそれと近い課題として「オペレーターの育成」。この2つが二大課題で、いつもぶっちぎりですね。

室谷 育成が課題になっているのは、現場のどこがボトルネックなんでしょうか。

山田 品質がブレるということです。一定の品質を保つことが最も大事で、そのブレをなくす方法には、製品の機能でやる面と、教育でやる面がある。一般の調査では「オペレーターのスキルの均一化」といった言葉で現れてきます。

大きなコールセンターでは、オペレーターの返信の品質をスーパーバイザーがチェックし、安定してそのクオリティを出せるようになったら次の段階へ、といった形で設計されていることが多いです。2000年代からずっとこの繰り返しをやっているのですが、正直、意外と重たいんですよ。だから「ここをAIで何とかできないか」というのが最近のトレンドになっています。

なぜ今も「メール」なのか

室谷 AIで何とかできないか、という話は後ほど詳しく伺いたいのですが、その前に前提を揃えさせてください。顧客対応、とくに問い合わせ対応の現在地について教えてください。

山田 問い合わせ対応の考え方は1980年代にアメリカから入ってきて、日本で立ち上がったのが1990年代。当時は電話かはがきしかありませんでした。2000年代にウェブフォームとメールが現れ、その後スマホ、SNS、LINEといったアプリが出てきて、2010年代まで対応チャネルがマルチ化していきます。今はそのチャネルを統合しよう、オムニチャネル化しようという考え方が一般的に良しとされていて、さらに2025年ごろから「オムニチャネルの一部をAI化しよう」という動きに入ってきた。だいたいこういう変遷です。

面白いのは、古くからある製品ほど、時代に合わせてカバーするチャネルを増やしている点です。顧客対応ツール「楽楽自動応対」もメール中心でありつつLINEでの応対もカバーし、オムニチャネル対応の変遷が見て取れます。

ただ、事業側が考えるべきは「そもそも問い合わせチャネルは何を用意するか」です。顧客が年配の方が多ければ電話が要るだろうし、若い人が多ければチャットでいい。チャネルを増やすほどカバレッジは広がりますが、「そこまで対応しなくていい」という発想も事業側には当然ある。

多くの商材に親和性があり、今いちばんカバーできているチャネルは何かというと、やはりメールなんです。なぜかというと、たとえばチャットはアプリですが、メールは「仕様」だから。メールはインターネットで決まっている仕様なので、誰が使っても同じになり、どのメーラーでも通信できる。SlackとMicrosoft Teamsは互いに通信できませんよね。あれはアプリだからです。メールがこれだけ時間が経っても使われ続けているのは仕様だからで、カバレッジが一番広い。だからどの事業者もメール対応を優先する。これからも無視できないチャネルだと思います。

そのうえで、メールならメールのどこを、チャットならチャットのどこをAI化するか、という議論がチャネルごとにある。顧客対応のAI化が効くポイントはチャネルごとに別々で、各社が工夫している段階ですね。

AIで削るべき時間はどこか

室谷 では、AI導入について、顧客対応の現場のどこに効き始めているのでしょう?

山田 大きく2つの使い方が流行っています。一つは教育です。過去のナレッジがお客様の問い合わせ内容も含めて大量にあるので、それを使えば模擬試験がいくらでも作れる。AIにやらせて「この人は何判定」とスコアリングするテストを作る人もいます。これはトレーニングの話ですね。

もう一つは、生成AIで返信文をサジェストしてもらう使い方。工数削減の文脈で、「1件あたり何分が何分になった」という効果を出しているところもあります。

――「楽楽自動応対」のAI機能は、この「返信文の生成」をチームのナレッジと結びつけたもの。生成AIツールを個人で使って返信文を作る担当者は増えているが、個人利用と異なるのは、「楽楽自動応対」を使うチーム全員の過去のやりとりがナレッジとして蓄積され、AIの参照元になる点にある。ベテランがこれまで返してきた文面をもとに、新人でも「先輩のようなメール」を自動で作れると評価されている。

導入企業でよくあるのは、メンバーが作った返信をリーダー層が承認してから送るフローだ。ラクスによると、自動生成を使うことで下書きの時点での品質があがり、リーダー層のチェック・修正の負担が軽くなったという声が多いという。返信を書く時間だけでなく、承認にかかる時間も減るわけだ。

運用上の大きなポイントとなるのが、「AIに渡すためのデータ収集・整備」が要らない点だ。AI活用では、過去データをAI用にまとめて投入する手間が新たに発生しがちだが、「楽楽自動応対」では普段の問い合わせ対応業務のなかでデータが自動的に蓄積され、AIがそれを参照する。

組織をどう変えるか——「変えない」という選択

室谷 AI導入には組織の壁がつきものです。AIを入れるなら、組織設計や教育体制も変えるべきですか?

山田 お客様の規模に依存しますね。テレビ通販大手のように、数百人規模のコールセンターを抱える企業なら、トラフィックに耐える大規模なAIシステムを入れ、半年がかりで教育プログラムを作り上げることもあります。

でも一方で、大規模でないところは、AI機能がある程度充実していて、自分たちのオペレーションに合う製品を選ぶことが重要だと私は思います。「自分たちのオペレーションをなるべく変えない」という発想です。

メールベースで問い合わせ対応をしてきた会社は今もすごく多いので、そのメールベースの仕組みをキープしたままAIのメリットを享受できる製品はないか、という視点で探されるケースが結構多いんですよ。

もちろん、既存のオペレーションに縛られず、AIを機に刷新したいと考える会社もあって、それは全く問題ありません。ただ私の経験上、今の運用を大きく崩してまで業務フローを刷新するのは、数千万円、数億円をかけるビッグプロジェクトの話です。

メールという最もパブリックなチャネルで作ったオペレーションを中心に、ちょっとしたチャネルをカバーしつつ、AIのメリットを受けたい。ほとんどの会社が考えているのはそういうことで、9,000社以上に導入されていて17年連続売上シェアNo.1(※)という実績から「楽楽自動応対」はそうしたニーズにこたえてきた製品なんだろうなと僕は思っています。

※メール処理市場において(出典:ITR「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2026」メール処理市場:ベンダー別売上金額推移およびシェア(2009~2025年度予測)、同レポートには旧製品名(メールディーラー)で掲載)

――「現行の運用をそんなに変更せずにAIのメリットを享受できる」は、ラクスが「楽楽自動応対」で目指している姿そのものだという。主な導入企業は顧客対応の部門が10名以上の規模で、導入のきっかけは「対応漏れや遅れでクレームが来ている」「まず目の前のマイナスをゼロにしたい」という切実なものが多い。メール対応での漏れ・遅れを防ぐ確実な土台があり、そのベースの上で無理なくAIの恩恵を取り入れられる点が大きな強みだ。

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浮いた時間で、人は何をすべきか

室谷 運用を変えずにAIで時間を浮かせられる、というのがここまでの話だと思います。では、その浮いた時間で人は何をすべきなのか。問い合わせ対応以外の昨今の潮流もお聞きしたいです。事業責任者や経営層にとって、顧客対応にどんな経営インパクトがあるのかなど。

山田 最近は、お客様に「成果」を与えることが重視される世の中になっています。長らく重視されてきたのは「良質な購入体験」でした。買った後にお客様が何をしているかはわからないことが多かった。だからせめて買うまでの体験を良くしよう、買った後に問い合わせてくれたらその体験を素晴らしいものにしよう、という考え方です。

それが最近は、お客様がその製品を通してどういう成果を出すのか、それを我々が手伝えないのか、というところまでが企業のカバー範囲になってきた。すると、契約や購買の後にもきちんとしたお付き合いをしなければならないという発想になる。かつてCRMは購買までのリードタイムを短くするための道具でしたが、買っていただいたお客様に成果を届けるところまで責任を持つための道具になっています。

室谷 買っていただいた後の対応が、守りの問い合わせ対応だけでなく、「過去にこんなお問い合わせがあったのなら、こんなご提案を」「もっと買ってよかったと思ってもらえるユースケースの提供」といったところまで入っていく、ということですね。

顧客対応の事業価値は「マイナスをゼロにする」と「ゼロをプラスにする」の2軸だと思います。対応漏れや遅れによるクレームを防ぐ、というマイナスをゼロにする部分は「楽楽自動応対」のような製品の活用等でカバーできる。顧客対応は事業成長のボトルネックを突破する手段としてまだまだ改善の余地がある。そのことを再確認しました。

「楽楽自動応対」について

――AIで削るべきなのは、顧客理解や関係構築ではなく、回答を探す時間、返信文をゼロから書く時間、上長が下書きを直す時間だ。

「楽楽自動応対」は、メールの対応漏れ・遅れを防ぐ仕組みでマイナスをゼロにした上で、さらにAIが日々の作業時間を削減する。現場の負担を抑えながら、人が直接向き合うべき顧客対応に集中できる環境を整えてくれる。

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